「お見送りの作法」生き方、死に方、人生は意味深い…
たまたま観ることになったこの映画、淡々としていながらちょっとしたどんでん返しもあり、心に残る映画でした。
ロンドン市ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ。孤独死した人の死後の事務処理をするのが彼の仕事。
エディ・マーサンが感情を抑えつつも感性豊かに演じていました。
イギリスの福祉は、紆余曲折を経ながら多様な福祉行政が行われ、長い歴史を重ねています。そんな古くて大きな組織の
中の、手間ばかりかかる片隅の部署である民生係として、淡々と誠実に仕事をこなすジョン・メイに好感が持てます。
しかし、突然の理不尽な組織からの通達と、近所の人の孤独死が重なり、ジョン・メイは今まで以上に心をこめて最後の仕事を全うしようとします。
そんな中、理不尽な上司に対するささやかな抵抗をしたり、恋の予感に対する粋な心遣いを見せたり、ジョン・メイがただの堅物の真面目なだけの人間ではない、細やかな心の持ち主であることがわかります。
そして、最後の数分間の大きな展開と更にラストシーンのどんでん返し…。
ジョン・メイは、仕事を仕事としてだけではなく、その都度、それぞれの故人の人生に向き合って真摯に弔おうとしていました。そして、孤独死だからこそ最後多くの人に参列させてあげたいという暖かな愛の心も持っていました。その心の全ては故人にきちんと伝わっていており、感謝もされていたのです。
この世では縁のない人でも、心を寄せることで見えない世界で心と心は繋がり、縁ができていくのかもしれません。
また、昔から人は死んだ時、生きていた時のシーンを見せられ、その時々のその人の心の中の隅々まで明らかになる、と聞きますが、最後のシーンで、本当に人はどんな心で生きていたか、死んでからわかるのだ、ということも感じました。