「それでも夜は明ける」、重いテーマでした。
覚悟はしていましたが「それでも夜は明ける」、重いテーマでした。
内容は日本語訳の題から感じられる希望を失わなければ人生が好転していく、といったニュアンスではなく、ただただ12年間の理不尽な奴隷生活を描き続け、原題の「12 Years a Slave」のほうがしっくり来るかもしれないと思いました。
奴隷制度そのものは全く賛同できるものではないですが、制度そのものより未熟な人間が権力を持った時の恐ろしさを感じました。
感情の統御ができない人間がその感情を他人にぶつけることでストレスを解消し、劣等感のある人間が他人を支配することでその劣等感を解消する、ということが権力とともに行使される現象は、実は今の自由な日本でもDVや虐待、モラルハラスメントといった形で存在し続けています。
奴隷制度をなくし南北に分かれていたアメリカを1つにしたリンカーンは、大義のための戦争であると信じつつも戦争によって多くの人民が苦しむ矛盾について、神に祈りながら自己点検を行っていたと言われます。
自分の感情がどんな信念からでていて、その信念に義はあるのかどうか、それは違った立場で見たらどうであるか、という自己点検を理性的に行う静かな時間を日々習慣的にもつことが大切です。
上に立つ人間ほど、自己洞察を深め、自分自身を統御できなければなりません。
経営者や管理職のみならず、教師や親ももちろんのこと、先輩後輩の関係でも見えない権力が発生するものです。
自己保身や自己満足による欲望と権力が繋がることほど怖いことはありません。
人間の尊厳は守られるべきであり、支配被支配の関係になることは人間の尊厳を損なうことになるのです。
たとえ、被支配の立場となり理不尽な扱いを受けたとしても、自分自身に対する尊厳を決して失わないことが自身の魂を絶望の淵から救うことになります。